こころとからだの健康
ネット・ゲーム好きはコントロールを失うと「精神障害に」!!
皆さまはネットやゲームのために一日にどの程度の時間を費やしているでしょうか?
新型コロナ感染症対策で外出が制限され、ネット通販やフードデリバリーなどの巣ごもり需要が増えました。また気晴らしの方法が狭まったことで、ゲーム需要も増加しています。
「ファミ通ゲーム白書2021」の調査によると国内ゲーム人口は調査開始以来初の5,000万人超え、家庭用ゲームユーザーが3割近く増加。2020年の国内ゲーム人口について、家庭用、PC、スマホアプリの3カテゴリーの合計が、前年比約110%の5,273万人となりました。2015年の調査開始以降初の5,000万人超えとなり、俗に言う巣ごもり需要が数字に表れた結果となっています。
世界のゲーム市場は2018年で1349億ドル(約15兆円)に達し、2021年には1740億ドルまで拡大する見通しであり、米国の成人は全体の65%にあたる1億6400万人が日常的にビデオゲームをしているとの試算もあります。
ゲームやネットは子どもから大人まで多くの世代が楽しめるものですが、はまり過ぎてしまうと様々な問題が出現し、病的な状態を引き起こします。
世界保健機関(WHO)が、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎにより日常生活が困難になる症状を、「ゲーム障害(Gaming disorder)」 と定義し、2018年に発表した最新版ICD(国際疾病分類)第十一版に加えました。
つまり、過度なゲーム依存は「精神障害」で疾病であるということです。
WHOが強い警告を出すにいたった背景には、eスポーツがいち早くブームとなった韓国や中国で深刻な社会問題となったことがあります。
また、この社会的流れや危惧に追従する形で、アメリカ精神医学会の診断基準である DSM-5も『インターネットゲーム障害』の診断基準案を作成し、次期基準にゲーム依存症は加えられる予定です。
ここでは、ICD-10に記載された診断基準をご紹介したいと思います。
ゲーム好き、ネットはまりを自覚しておられる方はチェックをしてみましょう。
「依存は慢性の再発性疾患であり、薬物依存と同様に報酬に関わる脳の神経回路が繰り返される快感刺激により変化した行動嗜癖という病気」であり、インターネット・ゲーム障害になると、日常生活に様々な影響・問題が生じます。
①生活が乱れ、朝起きられない
②昼夜逆転の生活になる
③十分な食事を摂らない
④使用を制限され暴力的になる
⑤ゲームに高額な課金をしてしまう
(参考:第2回ゲーム依存症対策関係者連絡会議 インターネット・ゲーム障害 神戸大学大学院 医学研究科精神医学分野 曽良一郎 )
自治体もそれぞれに対策に乗り出し、いち早く香川県でネット対策を「条例」に定め、令和2年4月1日から施行されました。
(参考:香川県HP 「ネット・ゲーム依存を予防するために」
https://www.pref.kagawa.lg.jp/kosodate/tiikikosodate/wvl90x200716114340.html)
国立病院機構久里浜医療センターなどが独自調査(2016年、2018年、2020年と2年おきに実施)に基づき示した報告書では、ネット依存やゲーム障害の治療施設は、2016年8月で28施設だったのが、2020年9月には89施設に増えました。新規の患者数も2016年度と2019年度で比べると、ネット依存が513人から1162人、ゲーム障害が302人から856人に増え、治療に関する「受け皿」の整備も始まっています。
また、ゲーム業界もゲームを安心安全に楽しむための理解促進サイトを開設し、ゲーム依存の予防に努めています。
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会
「啓発の取り組み」
https://www.cesa.or.jp/efforts/index.html
一般社団法人 日本オンラインゲーム協会
「生活の中のオンラインゲーム 健康的なプレイライフ」
https://japanonlinegame.org/campaign_onlinegameguide/life.html
ゲームやネットはストレス発散、ゲーム内でのコミュニケーション、達成感が得られるなど、上手に利用することでプラスの体験につながります。ゲームクリエーターやゲームプログラマーは中学生、高校生のなりたい職業にも毎年のようにランキング入りしています。
健康を害することなく、安心してゲームを楽しむためには、ゲームプレイを管理し、ルールや時間を守る、周囲とのコミュニケーションを大切にする、規則正しい生活を維持し、食事や睡眠、運動などに気を配る、プレイ中の正しい姿勢や距離を保つ、などが挙げられます。
筆者:産業カウンセラー
2021/9