こころとからだの健康

「女性活躍」Part9 ~女性特有の「がん」について考える~

2024/10/15
  • twitter
  • facebook
  • line
<

女性特有のがんの1位は「乳がん」です。
働きざかりの30代から増加し、40代後半がピークと言われています。
今回は「乳がん」について考えていきます

乳がんに対するリテラシーを高める

乳がんとは
乳がんは乳腺の組織に出来るがんで、多くは乳腺から発生しますが、一部は乳腺小葉や乳腺以外の乳房の組織から発生することもあります。
乳がんの主な症状は、乳房のしこりで、自分で乳房を触ることで気づくこともあります。また、乳房にくぼみができる、乳頭や乳輪がただれる、左右の形が非対称になる、乳頭から分泌物が出るなどの症状があります。

乳がんの罹患率
乳がんの罹患率は、50年前には50人に1人でしたが、現在は生涯に乳がんを患う女性は9人に1人と推定されています。

引用:日本対がん協会 部位別がん罹患割合(2020年)

2020年の乳がん罹患数は、91531人でした。
10万人当たり、141.3人が乳がんに罹患していることになります。

乳がんリスクが高い人

乳がんリスクが高い人

① 遺伝
遺伝性乳がんは、約7%~10%と言われ、がん発症を抑制する遺伝子であるBRCA2に変異があることで罹りやすくなります。
血縁者の中に乳がんに罹った人がいる場合、血液検査で調べることができますので医療施設で相談しましょう

②エストロゲン(女性ホルモン)
エストロゲンが分泌されている期間が長い人はリスクが高まります。
・11歳以下で初潮を迎えた人や閉経が55歳以上
・出産経験のない人、出産数の少ない人
・授乳したことがない人や授乳期間の短い人
・経口避妊薬の使用期間が長い人や閉経後に長期のホルモン補充療法を行っている人
・閉経後に肥満の人(脂肪組織の働きで、副腎のホルモンがエストロゲンに変化する)
など、乳がんリスクが高いとされています。

③生活習慣
・過剰な脂質摂取
・飲酒、喫煙
・夜間勤務や夜型生活
などの生活習慣も影響していると考えられています

乳がんは検診が大切です
上記のリスクに関わらず、定期的な乳がん検診は大切です。
厚生労働省は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を定め、乳がん検診を推進しています。
「問診及び乳房エックス線検査(マンモグラフィ)対象者は40歳以上で、2年に1回」
の検診が可能です。

しかし、実際の受診率は2019年調査では50%に満たない状況です。
罹患率の高い乳がんは、女性の死亡原因の上位に位置しています。罹患率は30代から増加しますから、自覚症状がないうちから検診を定期的に受けることを強く推奨したいと思います。

検査の方法
一次検診は、問診とマンモグラフィと呼ばれる乳房X線検査です。これは国際基準ですが、超音波検査を組み合わせることで、より高い精度で行うこともできます。
以前は行われていた触診は現在は推奨されていません。

乳がんは早期発見、早期治療が大切
乳がんは早期発見によって命を落とすことは少なくなっています。
早期発見で治療することで、一部切除で温存が可能になることもあります。
他のがんと比べ、5年生存率が高い病気であり、9割近い方が乳がんと診断された後も生きています。そのためには、早期発見し、できるだけ早く治療を開始しなくてはなりません。早期発見することで治療の幅が広がります。

男性にも乳がんはあります

男性乳がんとは
乳がんは一般的には女性に多い疾患ですが、男性の乳房に発生することもあります。乳がん全体の1%であり、男性では生涯を通じて1000人に1人が罹患するとされています。
発症者の多い世代は60代~70代で、しこりの出現、乳頭からの出血、皮膚潰瘍、腋のしこりなどがあります。

女性の乳がんと同様、乳がん罹患者が近親者にいる男性では、発症のリスクは2倍になります。また女性ホルモンの量が多いことも危険因子になります。

もし乳がんと診断されたら

乳がんと診断されると誰しもが不安を感じたり、動転してしまうことでしょう。けれども、不安に取りつかれたりしていると次の段階に進むことが難しくなります。
不安を軽減するためにも「相手を知ること」、つまり必要な情報を集めることが大切です。

まずは情報を集めましょう
「相手を知る」ためには、医療スタッフへの質問や、家族、経験者などに話をし、周囲に頼ること、相談することがとても重要になります。
治療方針、治療の内容はもちろん、経済的なこと面についてもしっかり確認し、じっくり考えます。

内閣府が令和元年7月に実施した世論調査結果「がん対策」によると、
がんと診断されたら、がんの治療法や病院に関する情報について、どこから入手しようと思うか?について、
①「病院・診療所の医師・看護師やがん相談支援センター以外の相談窓口」66.4%
②「インターネット・ツイッターやフェイスブックなどのSNS(国立がん研究センターウェブサイト「がん情報サービス」以外)が36.9%
③「家族・友人・知人」(33.8%)
④「がん相談支援センター(がん診療連携拠点病院の相談窓口)」(27.3%)
という結果でした。
2番目に多い、インターネットやX(エックス)などからの情報は、科学的根拠に基づく情報以外のものも多く掲載されており、正しい情報を得るのは難しいこともありますので、公的機関などのサイトの活用をお勧めします。

参考:
・国立がん研究センター 「がん情報サービス」
https://ganjoho.jp/public/index.html
・日本乳腺学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/

治療について
診断を受けてから治療を始めるまで、これまで経験してこなかった環境におかれます。
耳慣れない医療用語に戸惑ったり、仕事や生活上で調整しなくてはならないこと、経済的な不安、開示する人の範囲など思い悩むことも増えるでしょう。
分からないことは遠慮なく問いかけ、医療スタッフに相談し、サポーターを増やしましょう。

乳がんには様々なタイプがありますから、針生検や手術検体の病理検査で判定を行います。腫瘍の大きさによりステージに分けられます。
乳がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法などがあります。
乳がんは、手術によってがんを取り切ることが基本です。手術後の病理診断により、治療計画を検討し、がんの状態に応じてより術前薬物療法を行うこともあります。

治療方針に不安が生じたときや別の選択肢の可能性を感じたときにはセカンドオピニオンという方法もあります。

乳がんに限らず、がんは近年、早期発見により治癒が可能になってきました。
内閣府調査では「今までがん検診を受けたことはない」と答えた方は29.2%であり、その理由の一番は「受ける時間がないから」28.9%でした。
日本における一生涯におけるがんの罹患率は、男性で65.5%、女性で約51.2%ですから、2人に1人は癌に罹患する可能性があります。
「忙しいから」「時間がないから」「自分だけは大丈夫」などと先送りにせず、ぜひ、定期的な検診の実施を心がけていただければと思います。

筆者:パソナセーフティネット産業カウンセラー、公認心理師

資料ダウンロード全27ページパワハラ防止法に対応!体制づくりに役立つ資料を無料進呈資料ダウンロード全27ページパワハラ防止法に対応!体制づくりに役立つ資料を無料進呈