こころとからだの健康
9月は「障害者雇用支援月間」です ~「合理的配慮」について理解を深めましょう~
2024年4月に施行された「合理的配慮」について更に理解を深めましょう
令和6年4月1日から、障害者差別解消法により、合理的配慮の提供が義務化となりました。障がいのある人に「合理的配慮」を行うことなどを通じて「共生社会」を実現することを目指しています。
(内閣府 障害者差別解消法が変わります!「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」)
障害者差別解消法では何が求められるのでしょうか
平成28年にスタートしたこの法律は、令和3年に改正されました。
「不当な差別的取り扱い」の禁止、「合理的配慮」の提供が明記されています。
改正後、合理的配慮は事業者の努力義務から、令和6年4月1日から施行され、義務に変わりました。
「不当な差別的取り扱い」について理解度をチェックする
不当な取り扱いと思うものにチェックをつけましょう
「不当な差別的取り扱い」について解説
1~5は全て不当な差別的取り扱いにあたります。
本人の存在を無視して話を進めたり、その場に居ないかのような態度は人格の否定です。
障がいのある人に対して、正当な理由なく障がいを理由としてサービスの適用を拒否することや時間帯の制限をすること、障がいを持たない人には付けない条件を付けることなどは禁止されています。
「正当な理由」がある場合
障がいのある人に対する障がいを理由とした異なる取り扱いに「正当な理由がある」場合、すなわち当該行為が、
①客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、
②その目的に照らしてやむを得ないといえる場合は、「不当な差別的取り扱い」にはならない
正当な理由があると判断した場合は、障がいのある人にその理由を丁寧に説明し、理解を得るように努めることが望まれます。
「合理的配慮」の理解度をチェックする
正しいと思うものにチェックを入れましょう
「合理的配慮」について解説
1~5は、すべて誤りです。解説します。
1:合理的配慮は、個々の事情を抱える障がい者と事業主との相互理解の中で提供されるものであるべきです。事業者への負担の重すぎない範囲の中で対応するものであり、過度な要請には応じなくてよいものと指針に示されています。
障がい者の意向を十分に尊重した上で、しっかり話し合い対応案を検討することが求められます。
2:合理的配慮を提供する対象障がい者は、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」とされており、障害者手帳を所持していない方々も合理的配慮の対象となります。
3:募集・採用時には、どのような障がい特性を有する人から応募があるか分からないことがあります。ご自身で開示してくだされば良いのですが、採用の合否に影響を及ぼすであろう診断名等は防衛が働き、本人の口から出ないこともあります。
事業主がどのような合理的配慮の提供を行えばよいか不明確な状況であることを鑑み、障がい者ご本人からの申出をもって、障がい特性に配慮した必要な措置をとるものとされています。
4. 職場の状況の変化、また障がいの状況によっては、実際に業務に就いたのち、程度が変化し別の配慮が必要となる場合も考えられます。そのため、事業主は必要に応じて定期的に、当該障がい者に対して職場において支障となっている事情の有無を確認することが求められています。
5. 健康診断を通して事業者が取得する情報は、あくまでも労働者の健康確保を目的として把握するものです。そのため、合理的配慮を目的とするものではありません。個別の事情を考慮しながら、あらかじめ合意を取っておくなど、その都度適切に対応する必要があります。
「合理的配慮」の具体例
・「合理的配慮」の留意事項
・合理的配慮は、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つを満たすものであることに留意する必要があります。
①必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
②障害者でないものとの比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
③事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
合理的配慮の提供における留意点 対話の際に避けるべき考え方
・「前例がないから」「こうしたケースは今までない」
→前例がないこと、初めてのことは断る理由になりません
・「あなただけ特別扱いはできない」
→合理的配慮は障がいのある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的であり、その目的に沿った配慮は、「特別扱い」ではありません
・「もし…何かあったら」「事故が起きたら…」
→漠然とした不安やリスクだけでは断る理由になりません
不安を軽減するために何ができるのか、リスクを軽減するためにできることはどの様なものかなど具体的に検討します
・「○○障がいの人は…」「以前の○○障がいだった人は…」
→同じ障がいでも程度などにより適切な配慮は異なります。一括りにせず個別で検討します
様ざまな特性のある人と共生していくためには、互いの状況の理解が何より大切になります。そのためには、対話が何より大切になります。言葉の持つ力を信じ、困難が生じても話し合いで解決していきましょう。
障がいを持つ人にとって働きやすい職場は、誰にとっても働きやすい職場であると思います。
参考:内閣府 障害者差別解消法が変わります!「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」
内閣府「合理的配慮」を知っていますか?
筆者:パソナセーフティネット産業カウンセラー、公認心理師