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「こころ(心理的)の資本」について考える

2023/06/01
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企業が持つ財産には、知的財産、技術、組織力、顧客、現金や不動産などがあります。

多々ある財産の中で、今最も注目されているものは「人材」です。
この「人材」を最大限生かしポテンシャルを発揮させるためには、何が必要とされているのでしょうか?

いま、「こころの資本」が注目される訳とは

人材が成果を生み出すには
人が組織において成果を生み出すには、様々な要素が必要です。

一つ目は、「人的資本」と呼ばれる技術力、経験、ノウハウなどです。企業は「人的資本」を高めるため、研修やOJTなどで入社から組織社会化をサポートし、その後も様々な教育、研修などでスキルアップをサポートしていると思います。

二つ目は、「社会関係資本」と呼ばれる、人とのつながりを意味する人的ネットワークです。組織内外での人脈を作り、コミュニケーションにより、協働関係を構築して成果に繋げていくものです。

三つ目は、「こころの資本(Psychological Capital、略してPsyCap)」と呼ばれるものです。米国の経営学者フレッド・ルーサンス氏らによって提唱された概念で、将来に希望を持ち、自ら進んで目標を定め、挑戦し、自律的に行動する心の状態を指します。

現在は、社会環境の変化が激しいVUCA時代(注※)になり、組織で働く人々は、変化に適応しながら柔軟に行動することが求められるようになりました。
「こころの資本」を提唱したフレッド・ルーサン教授は、人は主体的、能動的な行為を通じ、持続的な幸福感を得ることが可能になると言います。

こころの資本の構成4要素 「HERO」とは?

フレッド・ルーサン教授は、「こころの資本は、訓練や学習によって高められる要因であり、意識的に変えることができる。持続的な幸福感を支えるこころの資本は4つの要素からなる」としています。

① Hope(希望):目標に対する熱意と意志、目標達成のための道を見つける力
・希望を高める要素に「動機づけ」があります。Hopeで求められる動機づけは「内発的動機付け」と呼ばれるもので、自身の中から湧き上がる興味や関心、欲求などを指します。
・目標達成のための行動を支えるには、自己を統制する力も必要ですから、セルフコントロール力も高めます。

②Efficacy(自己効力感):自分の能力や貢献に対する自信
・自己効力感は、過去の成功や貢献に至った経緯、強みなどを分析し、明確にすることで強化されます。
・自己効力感を高める自信の強化は成功体験の積み重ねです。周囲のスモールステップによる課題の提示や承認行動もサポートになります。

③Resillence(レジリエンス):困難に直面してもくじけない、立ち直る力
・失敗や困難に直面した際、ひとりのチカラでは解決できないこともあるでしょう。
そうした際に、援助希求行動が取れること。相談し、助けを求め、他者のチカラも自分のチカラにすることも大切です。
・今うまくいかないことが起きたとしても、過去にやり遂げてきた自分の過程を振り返り成功への鍵を見つけること。たとえ失敗してもそこから学び、復元することができるチカラです。

④Optimism(楽観性):物事の明るい面を見出す力
・もし、あなたに「心のフィルター」や「マイナス化」といった認知の歪みがあると、物事の明るい面を捉えることが難しいでしょう。適正な認知でポジティブな視点を持ち、希望に満ちた目標を設定することができると、より具体的な行動に繋がります。
・様々な状況の中においても、人やできごとに対して、常に感謝の気持ちを忘れないことは大切です。「お蔭さま」「ありがとう」の気持ちは、傲慢さや独りよがりと対局です。対人関係を滑らかにするだけでなく、ポジティブな気持ちを支えます。

「こころの資本」は、遣り甲斐やワーク・エンゲージメントを支える大切な要素となっています。
「こころ」をマネージメントし、ポジティブな心理的エネルギーを持つことで、困難や変化に対応ができ、また自己開発、成長を促すでしょう。
持続的な幸福well-beingは、生産性の向上と好循環し企業の成長も高めるでしょう。

注※
・VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった造語です。
目まぐるしく変化する予測困難な状況を意味します。

HRコラム
職場のメンタルヘルス 管理職シリーズ 「VUCA時代に求められる新しいリーダー」~「インクルーシブ・リーダーシップ」とは?~
もぜひ、ご参照ください。

参考:「こころの資本」-心理的資本とその展開-
フレッド・ルーサンス著 中央経済社

 

筆者:セーフティネット産業カウンセラー、公認心理師

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