こころとからだの健康
メンタルヘルス ~歯の健康とストレス~
成人の歯は、全部で何本かご存じでしょうか?
親不知(おやしらず)を含めると全部で32本、親不知が生えていなければ28本です。
歯は年齢と共に減少してしまう傾向にありますが、どうして減少してしまうのでしょうか。
歯を失う原因とは?
歯を失う2大原因は、1位が歯周病で37.1%、2位が虫歯(う蝕)で29.2%です。
近年の研究により、歯周病と全身の健康との関係が明らかになり、歯周病予防の大切さに注目が集まっています。
歯周病は生活習慣病であり、糖尿病、心臓病、肺炎、低体重児出産、骨粗しょう症などとの関連も指摘されています。
歯周病はサイレント・ディシーズ(静かな病気)と呼ばれているほど、初期の症状に自覚が少ないため、自覚するようになったときに症状が悪化していることも少なくありません。
(引用:(公財)8020推進財団 第2回永久歯の抜歯原因調査2018年)
ストレスは歯周病に影響する
厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」概況によると、労働者の5-6割の人が強いストレスを感じているという結果です。
疲労やストレス状態が継続すると自律神経のバランスが崩れ、免疫機能が低下します。
免疫機能が低下することで、「細菌を洗いながす」「細菌の活動を抑制する」という働きのある唾液の分泌量が減少します。
すると一気に口の中の細菌が増加し、歯肉炎を起こしてしまいます。歯肉炎を放っておくと歯周病に症状が進んでしまいます。
また、ストレスが原因で無意識に「食いしばり」や「歯ぎしり」が増え、不自然な強い力が歯周組織に加わり、歯周病を悪化させることも分かっています。
チェックしてみよう! あなたの歯周病度チェック
(引用:(公財)8020推進財団 第2回永久歯の抜歯原因調査2018年)
□ 口臭がなんとなく気になる。
□ 歯ぐきがやせてきたみたい。
□ 歯と歯の間にものがつまりやすい。
□ 歯をみがいたあと、歯ブラシに血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある。
□ 歯と歯の間の歯ぐきが、鋭角的な三角形ではなく、オムスビ形になっている部分がある。
□ ときどき、歯が浮いたような感じがする。
□ 指でさわってみて、すこしグラつく歯がある。
□ 歯ぐきからウミが出たことがある。
1~2項目にチェック 歯周病の可能性あり
3~5項目にチェック 初期、あるいは中期歯周炎以上に進行している恐れあり
どうでしたか?
チェックが入った方は、放置せずに歯科医に早めにご相談をなさると良いでしょう。
むし歯(う蝕)について
むし歯の原因はミュータンス菌という細菌です。
この細菌は体内をめぐり全身に影響を及ぼすことが分かっています。
血管壁にむし歯菌がつくことで脳卒中を引き起こしたり、むし歯菌のかたまりが弁膜内にでき、心臓病を引き起こすこともあります。
むし歯予防について
むし歯は歯垢(プラーク)を取り除くことで予防ができますから、日々の歯磨きを正しく行うことが大切です。
効果的な歯磨きのタイミングは、毎食後に1本ずつの歯を意識して前側、断面、後ろ側を軽い力で往復して小刻みにブラッシングします。
就寝中は口の中が乾燥しやすいため、むし歯菌が繁殖しやすくなります。就寝前の歯磨きは特に大切と言われています。
歯磨きができないときは?
お仕事の関係や外出先など、歯磨きができないこともありますね。
そんな時には、以下の方法で予防を行いましょう。
・水を口に含み勢いをつけて口内に残った食べかすを洗い流す
・食後の飲み物を工夫する
例)ポリフェノールが含まれる緑茶、ウーロン茶など
・キシリトール配合のガムを嚙む
ポイントは、食べかすを口の中に残さないことです。
目標は「8020」
健康的な老後を過ごすためには、80歳で20本の歯があることが目標です。
年齢別にみる歯の本数は年々増加しており、2016年には75~84歳の「8020」達成者が50%を超えました。
健康な歯が残っていれば「噛んで食べる」ことが可能になります。
よく噛むことには多くの効果があります。
・ゆっくりよく噛むことで食べ過ぎが防止でき、さらに消化を助けます
・筋肉を動かすことで表情筋の衰えを防止でき、ことばの発音が明瞭になります
・脳に流れる血液量が増加し、脳の活動を助けます
歯の寿命を伸ばし、健康寿命を伸ばすことは、健やかに暮らすための大切なポイントです。「美味しく食べる」楽しみがキープできるよう、今から口腔ケアを行い、歯の寿命を延ばしましょう。
参考:8020財団 Let‘s8020
https://www.8020zaidan.or.jp/about/
厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth
筆者:セーフティネット産業カウンセラー、公認心理師