こころとからだの健康
職場のメンタルヘルス ~「HSP ハイリー・センシティブ・パーソン」とは?~
最近のSNS上や相談室に寄せられるご相談の中に「HSP」という言葉が表れるようになりました。
Highly Sensitive Personは人口の20%の割合、約5人に1人存在すると言われています。
身近に多く存在するHSPを理解することは、対人関係を作るうえで大切なことです。
HSPとは?
米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念で、「神経が細やかで感受性が強い性質を生まれ持った人」のことで、「人の気質」を表す名称です。
「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」と呼び頭文字をとって「HSP(エイチ・エス・ピー)」と呼ばれています。
HSPの4つの特性
アーロン博士によると、HSPには「DOES(ダズ)」と名付けた4つの特性があるといいます。
以下に説明する4つの特徴の頭文字をとり「DOES(ダズ)」と呼ばれています。
その特徴は、
1.【Depth of processing】深く考え、深く処理する=深い処理
物ごとを始めるまでにあれこれと考えぬき、答えを出すのに時間がかかってしまったり、一つのことから多くのことを想像し考える能力。
2.【Overstimulation】過剰に刺激を受けやすい=刺激に対する圧倒されやすさ
人混みや大きな音に敏感で、騒音などに苦手さがある。
友人との時間は楽しめるものの、気疲れを起こしやすい。
3.【Empathy and emotional responsiveness】全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い=共感能力
ときに人の気持ちに振り回され、人が怒られているときに自分のことのように感じて傷ついてしまう。些細なことに驚いたり、映画や音楽に感情移入し号泣したりする。
4.【Sensitivity to subtleties】日常のささいな刺激を察知する=環境感受性
周囲の人のタバコの匂い、柔軟剤の香りに敏感に反応し気分が悪くなる。
衣服がチクチクしたり、タグの違和感が我慢できない。
日光やチカチカする光に敏感。
HSPの定義
アーロン博士は上記の4つを全て満たす人がHSPであり、一つでも当てはまらなければHSPではないと定義しました。
HSPの脳機能
こうした敏感、繊細さには理由があります。脳の偏桃体という部位(感覚的な刺激に対して無意識的・反射的に対応する)の機能が、生まれつき過剰に働きがちであるためと言われており、持って生まれた「気質(特性)」という理解です。
この気質は、生き物の生存本能(生き残るための戦略)の一つであるともいわれていて、
人以外の動物、鳥、魚、イヌ、ネコ、馬、霊長類などに備わった生存戦略です。
HSPは、精神疾患などとは異なりますから、特性の一つとして理解し、その特性と上手に共存し、付き合っていくことが大切です。
HSPに対処する
もし、あなたやあなたの周囲の人がHSPであれば「何に困っているのか」「何が苦手なのか」を知り、それぞれに合わせた対処法を見つけることが大切です。
たとえば、
・苦手な刺激をできるだけ避ける。
刺激を受けると反応が起きますから、刺激が起きやすい環境をつくらないことが求められます。一緒にいて心地良い人との関係を大事にし、苦手な人との接触はできるだけ避ける。
・外からの刺激、環境の調整をする。
特質を周囲に理解してもらう努力を行い、席の位置を調整したり、耳栓で雑音を軽減したり、周囲の刺激を軽減するためにパーテーションを使用したり工夫をする。
また、肌さわりの良い衣服を身につける。お気に入りのメーカーを決めておく。
・刺激を受けても別の対処方法は常に存在することを知っておく。
信頼できる人の存在や相談相手を見つけ、一人で悩まず相談する。
HSPは生きづらさがある反面、恩恵もあると言われています。繊細であるがゆえに人より良い側面に気がついたり、共感し、感動することができるからです。
その特色を生かし、自分の良さを育てることで弱みと感じている特質を、自身の強みであるという意識にリフレーミングしていきましょう。
参考:ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 単行本 – 2000/12/1
エレイン・N. アーロン (著), Elaine N. Aron (原著), 冨田 香里 (翻訳)