こころとからだの健康
職場のメンタルヘルス ~思いやり行動を増やしましょう~
「情けは人の為ならず」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。
古くからある日本のことわざで、「人に親切にすれば、その相手のためになるだけでなく、やがてはよい報いとなって自分にもどってくる」という意味です。
海外でも「良いことをすると返ってくる」という同様のことわざがあり、人への労りや思いやり、やさしい心を持つことの教訓にしているようです。
新型コロナ感染症の感染拡大が発生してから3年、在宅勤務の導入や感染予防対策での三密予防などで、
「人間関係が希薄になったと感じる」
「コミュニケーションが減少してしまった」
「孤独を感じることがある」
という声も耳にします。
こうした状況を変えていくために、今、できることを考えたいと思います。
「返報性の法則」人は受けた恩を返したい
アリゾナ州立大学名誉教授 心理学者のロバート・B・チャルディーニ博士の名著「影響力の武器」で「返報性の法則」が紹介されました。
返報性の法則には数種類ありますが、今回は「好意の返報性」についてお伝えします。
「人は他者から好意を受けるとその好意を返したい」心理が働くというものです。
例えば、困った状況下で同僚からのサポートがあって助かったとき、「何か自分にもできることがあれば言ってください」という気持ちが湧く。といったことです。
こうした助け合いの心理は、職場での人間関係を円滑にするきっかけになりますね。
今、こうしたちょっとした行動が見直されています。
職場における「思いやり行動」
職場の中には、仕事で負荷を感じていたり、困ったことがあっても、周囲への気遣いや遠慮が働いたり、自ら助けを求められない人もいます。
また、この3年間に入社した社員は、新型コロナ感染対策により社内の縦横斜めの人間関係作りが希薄になってしまったということもあり、誰にサポートを求めたらいいのか分からないなど、孤立感を感じている人も少なくありません。
「思いやり行動」とは、誰かが困っていたり、余裕がなさそうに見えたり、忙しそうだなと感じたときに、自発的に声掛けをしてサポートをしてあげる行動です。
何か特別なことをするのではなく、日常の業務の中で、ちょっとしたお手伝いを気さくに申し出る、というイメージでしょうか。
例えば、
・パソコン作業のちょっとしたコツを教えてあげる
・同僚が忙しそうだったので、ランチのお弁当を自分が買うときに声掛けして買ってきた
・台車から荷物を降ろしているときに声掛けして手伝った
・出勤時に隣のデスクの消毒もついでに済ませた
・残業申請した後輩に手伝えることはないか訊いて助けた
などなど
「思いやり行動」が増えると
職場の中で思いやり、助け合いの行動が増えていくと、職場の雰囲気が変わります。
周囲の人に対する信頼感が生まれ、これまでより良好な関係性が育まれます。
助けてもらった経験をすることで、安心感が醸成され、次は自ら「相談しよう」「自分も声掛けしよう」という心持ちになることもあるでしょう。
サポートが得られる職場では離職も少なくなることが予想されます。
「困っている?」
「自分にできることある?」
「○○しようか?」
まずは、あなたからスタートしてみましょう。
筆者:産業カウンセラー 公認心理師