両立支援

仕事と介護の両立について考える Part2 ~介護離職をいかに防ぐか~

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はじめに

近年の急速な高齢化により、2015年には26.7%が高齢者となりました。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2030年には日本の人口の31%の人が高齢者となり、2050年では4割の人が65歳以上となる「超高齢化社会」が到来します。

少子高齢化の影響は労働力の低下を呼びます。2030年には労働需要(7073万人)と労働供給(6429万人)の差が644万人になると言われています。
国は労働力の確保のため、65歳以上の雇用の促進、女性労働者の確保を推奨していますが、寿命が伸びたことで働きながら介護をするケアラーも増加することが予想されます。

2016年に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において「介護離職ゼロ」という目標を国は掲げ、介護に取り組む家族の「仕事と介護の両立」をあげましたが、2020年の厚生労働省「雇用動向調査」によると、個人的理由で離職した人のうち、7.1万人が「介護・看護」を理由に離職しています。
性・年代別の割合をみると、男性は「65歳以上」、女性は「55~59歳」で最も高くなっています。

【厚生労働省「雇用動向調査」2020年】

2020年には団塊の世代が70歳を超え、その世代を支える団塊ジュニア世代が介護離職を余儀なくされると、日本の経済は成り立たなくなります。
高齢者と現役世代が共倒れしてしまうリスクを回避するには、何をしていけばよいでしょう。

「介護休業」について

厚労省は、介護と仕事の両立を支援するために「介護者のための支援制度」を設けています。
育児・介護休業法に基づき「要介護状態」の家族を介護する社員は「介護休業」を取得することが可能です。
・「要介護状態」とは、負傷、疾病などにより2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態を言います。
・「対象となる家族」とは、配偶者、父母、子、配偶者の父母や祖父母、兄弟姉妹、孫です。
・「休業できる期間」は、対象家族一人につき、要介護状態に至るごとに3回を上限として通算93日までです。

介護の長期化

ここで注意しておきたいのは、介護は、介護を受ける方の状態や状況により長期に及ぶことがありということです。
公益社団法人「生命保険文化センター」が実施した調査によると、介護を行った期間の平均は61.1か月(5年1か月)であり、4年を超えて介護した人は約5割という結果でした。
厚労省調査によると、2025年には65歳以上の認知症高齢者数が約700万人に増加し、65歳以上の高齢者の5人に1人に達することが見込まれます。

地域包括支援センターと連携し、自身にあったサービスを活用する

通算93日の介護休業は、長期化する介護に対して「短い」「不足では?」と不安を感じる方もおられると思います。この93日間の介護休業は、「地域包括支援センター」と連携し、必要に応じて自宅改修や権利譲渡、入退院の手続き、継続的な支援などの介護プランを立てるための相談会、手続きなど有効に使われることが肝要です。

長期化することが予想される介護は、一人で対処するには厳しい現実があります。相談先を多数確保し、状況に応じて相談先を選びましょう。
また、介護サービスを上手に活用し、仕事と介護の両立ができる環境を整えることが大切です。
共倒れを予防するために、例えば、休日に介護サービスを利用し、ご自身が休息できる時間の確保を行うなど、自分自身の心身の安定に目を向けましょう。

 

【介護している】介護について相談した人 相談先

「地域包括支援センター」は全国5千か所以上存在している、介護・医療・保健・福祉の側面から高齢者を支える「総合相談窓口」です。専門知識を持った職員が対応し、相談は無料です。要介護になる以前の予防対策、介護の事前情報なども知ることができます。

「こんなこと聞いてもいいのかな?」とどんな些細な疑問でも気軽に相談をすることができますので、いざという時戸惑わないよう、一度はお近くの地域包括支援センターに足を運んでみましょう。

 

参考:
・厚生労働省:全国地域包括支援センターの一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

・ 政策・経営研究 企業におけるダイバーシティ推進と働き方改革「仕事と介護の両立支援」
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2017/12/24.pdf

・厚生労働省 「仕事と介護の両立支援に関する実態把握のための調査研究事業企業調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000722894.pdf

・厚生労働省 「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」概要
https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0136/9413/sankoushiryou2.pdf

 

筆者:産業カウンセラー、公認心理師

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