こころとからだの健康
職場のメンタルヘルス 管理監督者向けpart3 ~部下指導について~
弊社相談センターは、どのようなご相談でもお受けできる「何でも相談」として窓口を開設して参りました。会員企業様の従業員様はもとより、中間管理職、人事、総務部門、経営層の方からのご相談も多く寄せられています。
今回は数多く寄せられたご相談から一部、代表的な事例(加工済み)を皆さまと共有させて頂きます。
上司Aさんのご相談:
「入社2年目社員のBさんへの指導方法について悩んでいます。
真面目な社員なのですが、最近になり、連絡したはずのミーティングを失念したり、指示した資料の作成が指定期日に間に合わないことがあります。確認すると「すみません。やっています。今日提出します。」と返事は良いのですが、1日経っても提出がありません。
在宅勤務のため、メールでやり取りをしたのですが、心配なため電話で進捗を確認した上で、『困ったことはないか?』と聞いたのですが、『大丈夫です。』と言うばかりです。」
「今後、どのように関わればよいでしょうか?これは、もしかしてメンタル不調なのでしょうか?」
カウンセラー:
部下を心配されてのご相談です。
ミーティングを失念したり、提出物が完成しないなど、今までのBさんからはあまり考えられない状況と語られました。
メンタル不調を想定することも大切ですが、もう少しお聞きする必要があります。
例えば、
・ミーティングを失念した後にもミスが続いているのでしょうか
・指示した資料作成は、Bさんの今のスキルで無理なくできる範囲でしょうか
・提出期限に無理はなかったか、Bさんの意見を確認しておられたでしょうか
・指示した資料作りについて、進捗の報告や途中経過を実際に確認をされていたでしょうか
・指示した資料作成以外の業務の量と質はどの程度あるのでしょうか、また過剰になってはいなかったでしょうか
・残業時間はどうでしょう。増加傾向にないでしょうか
こうした業務に関する視点に加え、
・これまでのBさんとの関係性はどうであったでしょうか
・ズームなど、顔を見て話せるツールは活用できそうでしょうか
・Bさんと対面で話せる出勤日は作れそうでしょうか
・Bさんの性格やこれまでの仕事に対する姿勢はどうでしょう
など別の視点でもA上司のお考えをお聴きしていきます。
また、心配して行った問いかけのポイント
「何か困ってない?」「最近どう?」といった抽象的な問いかけより、事実に基づいた具体的な問いかけ、言葉選びなどについてAさんと話し合いました。
上司Aさんの応答:
2年目になり難しい課題を出した。課題に対し他の業務の調整はしていない。提出期限も自分の判断で決め、Bさんの意見は確認せず。
ミーティングの失念は一度きりで、その他の会議には時間に出席をしている。
Aさんはご自身の指示の出し方に確認や工夫が必要だったと振り返られたようです。
一方で、Bさんの自己主張の在り方にも課題はありそうです。
今までもAさんの指示や指導に異を唱えたことがない。とのこと。これまでの指導がBさんにとって、適切だった可能性もありますが、「真面目で責任感が強いひととなり」から無理をしていた可能性も否めません。
在宅勤務は、オンオフの線引きが難しく、また残業を見逃してしまうリスクもあります。他者から作業を邪魔されるリスクが少ない分、過集中になってしまうことで脳疲労も蓄積されやすくなります。
カウンセラーとのやり取りからAさんは、「もう少し丁寧な見守りや声掛けを心がける」「Bさんの性格を理解した上で、Bさんの意向を確認しつつ指示をだし、話し合う機会を持つ」など発言されました。
上記のご様子からメンタルヘルスに関する問いかけも排除はできません。具体的な言葉かけなどを一緒に考えました。
カウンセラーへの相談は、物ごとを客観的に俯瞰で見ることを助けてくれます。
一人では気が付かない新たな視点を見つけることに役立ちます。カウンセラーは、相談者の中に眠っている解決方法、答えを引きだすお手伝いをしています。
上記のようなご相談以外にも、
・メンタル不調から復職した部下への接し方を知りたい
・休職中の部下への連絡方法は?
・部下の家庭問題を相談されたが、どこまで相談に乗ればよいのだろうか
・今までの指導方法が通用しない部下に苦慮している
・部下同士の人間関係が悪化して職場の雰囲気がギクシャクしている。仲裁に入った方がいいのか
・部下から、他の部下からのハラスメントのような言動を相談された。通報するほどではないというが、関わり方や指導について知りたい
・部下が犯罪に巻きこまれた。今後について知りたい
・部下が女性の場合、身体の不調について聞きづらい。ハラスメントと言われるのでは?とこちらが構えてしまう。どう声掛けをするべきか教えてほしい
などなど、様々なご相談が寄せられています。
社内資源を活用することはもちろんですが、何をどのように、どこに相談をするかなどを含め、先ずは、ご相談を頂き、お気持ちや思考の整理に相談センターをご活用頂ければ幸いです。
筆者:産業カウンセラー 公認心理師