こころとからだの健康

「女性活躍」Part4 ~ミドルエイジのメンタルヘルス 更年期~

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ミッドライフクライシス(中年の危機)

ミッドライフクライシスという言葉を生み出したのは、アメリカの心理学者ダニエル・レビンソンです。
レビンソンは、成人の発達を四季に例え、その中で40~45歳ころを成年前期から中年へ移行する過渡期としています。この過渡期には約80%の人が心の激変を経験すると言われています。

レビンソンは、「中年への過渡期」には自己の内部だけでなく、外部との関係性において、4つの葛藤「若さと老い」「破壊と創造」「男らしさと女らしさ」「愛着と分離」が生じるとしています。
これらの葛藤が生じることで、アイデンティティの拡散、危機が生じやすくなり、価値観、人生観の転換によるアイデンティティの再体制化が必要になります。

4つの葛藤のひとつである「若さと老いのバランス」は、更年期症状の自覚や疾病の発症などに遭遇すると「自分は若いつもり」けれども「からだは衰えている」という葛藤を生みます。またこの年代になると親しい人の「死」や病気の報告なども受けることが増え、更に子のある人には、「子の独立」「子育ての終了」による分離不安や、会社や役職に対する愛着に関する葛藤が起きることもあるでしょう。

女性の身体

ミッドライフクライシスの時期は、身体も大きく変化します。更年期は、個人差があるものの、卵巣の機能低下が45歳前後から始まり、55歳前後には、閉経を迎えます。
卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は、20~30代でピークを迎えますが、40代に入ったころから急激に低下が始まります。
これにともなって、さまざまな身体的、精神的症状が現れるのが更年期障害です。個人差はありますが、早い人は40代に入ってすぐ症状を自覚することもあります。

厚生労働省は、更年期症状の定義を、
更年期症状:更年期に現れる様々な症状の中で他の疾患に起因しないもの。 としています。
更年期障害:更年期症状のうち、生活に支障が出る場合を「更年期障害」といいます。 更年期障害になると、QOL(生活の質)が低下して、働く女性の場合は仕事の能率が落ちたり、体調が悪いため仕事を継続できなくなって離職する場合もでてきてしまいます。

更年期の主な症状

更年期症状は、多岐にわたりますが、おもな症状は次のようなものです。
ほてり、のぼせ、発汗、冷え、めまい、耳鳴り、頭痛、動悸、息切れ、イライラ、不安感、不眠、抑うつ、無気力、肩こり、腰痛、関節痛、疲労感、皮膚症状(乾燥、かゆみ、湿疹など)、腟の乾き、性交痛、頻尿、尿失禁、膀胱炎。
このほか、さまざまな症状を呈します。

厚生労働省は「更年期症状」について初の調査を実施し公表

【年代別 更年期障害の可能性】

今回の調査結果によると、「更年期障害の可能性がある」と、40代は28.2%、50代38.3%の女性が感じているにも拘らず、実際に「医療機関を受診し、更年期障害と診断された」女性は、40代で僅か3.6%、50代でも9.1%という結果でした。

更年期症状を感じても受診しない人が8割

また、更年期症状を自覚し始めてから医療機関受診までの期間は、「すぐに」「1か月程度してから」「3か月程度してから」を合わせても、40代で9.4% 50代で11.6%でした。一方で、「受診していない」割合は、40代が81.7%、50代は78.9%で、ほぼ8割を占めています。

更年期症状を自覚する人の中で、日常生活への影響を「とてもある」「かなりある」と答えた人は、40代で11.7% 50代では、8.4%ですが、「少しある」と答えた人を合わせると、40代は33.9%、50代で27.1%であり、40代、50代の女性が更年期症状の自覚があるものの、多くの人が受診をせずに過ごしていることが今回の結果で明らかになりました。

どうしてこのような結果になっているのでしょう。筆者の経験や相談室のご相談などから考えてみました。
1つ目には、更年期障害に対するリテラシーが不足している
2つ目には、症状は自覚しているものの、受診するほどではないと自己判断をしている
3つ目、何科を受診したらいいのか分からない、もしくは受診へのハードルが高い
4つ目、自分なりに対処をし、何とかやり過ごしている
5つ目、ひたすら我慢している
などでしょうか。

更年期症状に対処する((厚生労働省研究班 東京大学医学部藤井班 監修)

更年期障害は、適切な治療により軽減できる可能性もあります。女性ホルモンの低下による不調に対しては、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬による治療が行なわれます。HRTに使うホルモン剤はいろいろありますので、症状により使い分けができます。ホルモン剤は内服薬のほかに、皮膚に貼るパッチ剤や皮膚に塗るジェル剤もあります。
腟の乾きや性交障害には、ホルモン剤の腟錠や潤滑ゼリーなどが有効です。
ホルモン剤と漢方薬を併用して使うこともできますし、漢方薬だけで対処する場合もあります。また、自律神経調整薬、睡眠剤や向精神薬を使うこともあります。
ここで大事なのは、更年期障害の背景に心的ストレスや性格的なものがあるので、薬物療法だけでは十分でないことがある、ということです。カウンセリングが有効なこともあります。

チェックしてみる

気になる症状のある方は、下記、SMIスコア(簡略更年期指数)チェックリストをご参考になさってください。

また、更年期症状は個別性も高く、上記以外の症状に粘膜の変化、物忘れや記憶力の低下、耳鳴り、肌荒れ、などが自覚されることもあり、ドクターショッピングにいたる方も多いと言われています。いつもと違う状態が継続している場合は、我慢せず先ずは専門医にご相談ください。

参考:厚生労働省 更年期症状・障害に関する意識調査 結果概要
https://www.mhlw.go.jp/content/000969166.pdf
働く女性の健康応援サイト
https://joseishugyo.mhlw.go.jp/health/menopause.html
ヘルスケアラボ
https://w-health.jp/climacterium_alarm/about_climacterium/

筆者:産業カウンセラー 公認心理師

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