両立支援
「女性活躍」Part3 ~子育て世代のキャリア~
出産後も働き続けている女性労働者はどのくらいおられるでしょうか?
「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」から
国立社会保障・人口問題研究所が5年毎に実施している 「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(※1)によると、「2010~14年」の最新調査で、第1子出産前後に女性が就業を継続する割合は、調査開始以来、初めて半数(53%)を超えました。
とはいえ、第1子出産を機に離職する女性の割合もなお46.9%あり、二人に一人のママが妊娠、出産を機に仕事を辞めています。
(※1)国立社会保障・人口問題研究所 「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」
「仕事を続けたい」思いを持ちながら、離職を決めたママたちへのアンケート結果(※2)によると、
・「育児と両立できる働き方ができなさそうだった(できなかった)」 57.7%
・「勤務時間があいそうもなかった(あわなかった)」 46.2%
・「職場に両立を支援する雰囲気がなかった」38.5%
・「産前・産後休業や育児休業など育児のための休暇・休業を取れそうもなかった(取れなかった)」19.2%
・「保育所等に子どもを預けられそうもなかった (預けられなかった)」15.4%
という声があり、両立支援、離職予防の取り組みは、企業によるサポート体制が要であることが分かります。
(※2)平成 30年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための 調査研究事業 報告書
女性が妊娠・出産後も働き続けられるよう、国は「育児休業」「短時間勤務制度」「育児休業給付」などの制度を作り、サポートする姿勢を打ち出しています。
けれども就業を希望するママや相談を受ける上司等が、こうした国の制度を事前に把握していないことが実際は多いのでは?と思います。
企業には、法律で定められた制度を常に従業員に向け、情報発信を行い、利用を呼び掛ける姿勢が求められますし、従業員もこのような制度を「知っておく」ことで、事前の準備や両立の可能性が広がるのではないでしょうか。
妊婦・出産・育児両立支援制度の例を挙げてみましょう。
例えば、
・3歳未満の子どもを育てる際には、労働時間を1日6時間に短縮する「短時間時短制度」があります。こうした制度を活用すると、保育園の送迎時間のタイムリミットにドキドキせずに済むかもしれません。
・「育児休業給付金」は、家計の負担軽減のために設けられている制度です。育児のために仕事を休業した際に、収入が減ってしまったり、育児に係る出費が嵩むことがあるでしょう。雇用保険に加入している労働者が育児休業中に給与が一定以上支払われなくなった場合、雇用保険から給付される給付金のことです。子どもが1歳(支給対象期間延長要件に該当する場合は1歳6か月、または2歳)まで給付を受けられます。
・子供が1歳になるまでに、「保育園がなかなか見つからなかった。」という声も耳にします。もし、保育園が見つからなかった場合、育児休業は2歳まで延長できます。
就業を希望していても保育園が見つからないことで復職を諦めざるを得ない、そんなママがおられたときには、こうした制度があることを伝えていきましょう。
・子供が小さい時には、様々な予防接種や健診が実施されます。子育て中の様々な出来事に対応するために有休は貴重です。「子の看護休暇」制度は、子供一人の場合は年に5日利用できます。こうした制度も利用しましょう。
上記の以外にも、「休業制度」「出産手当金」「社会保険料免除」「母性健康管理措置」「所定外労働の制限」(※3)等々があります。
(※3)育児・介護休業法のあらまし(令和4年3月作成)
「周産期」とは、出産前後の期間を指し、通常妊娠22週から出生後7日間を指します。産後うつ病に伴う自殺や児童虐待など、メンタルヘルスとの関連を考える場合、出生後数か月から1年程度ともう少し長い期間を指すこともあります。
近年、高齢出産・不妊治療・出生前診断などの新たな課題も増え、働くママのストレスも多岐にわたるため、それぞれの事情に則したメンタルサポートが求められるようになりました。
メンタルヘルスの変化に気づく、対処する
女性が出産後に就業を継続するためにはメンタルヘルスの不調に早期に気づき、症状が軽いうちに対応することが重要です。
そのためには、
・「妊婦健診」をしっかり受けましょう。
・産後は「乳児家庭前途訪問事業」の際に、訪問に訪れる専門家に「気になることは何でも相談」しましょう。
・出産後は生物学的に体が大きく変化します。出産前の自分と比べダメ出しをするのではなく、新たな気持で「今ここ」の自分を受け入れ、できる範囲で楽しむことを心がけましょう。
・出産後は新たな役割を担うことになります。これまでの役割の優先順位が変わります。その中にあっても、自分自身のことを後回しにせず、セルフケアを捻出するためにパートナーや周囲の人たち、行政のサポート、必要に応じて家事代行やシッターを積極的に取り入れましょう。
・もし、疲労が中々回復しないなと感じたら、睡眠時間を見直し、休息を優先しましょう。
・「完璧」な親はいません。100%を目指すのではなく、「できないことがあって当たり前」と自分に声を掛けましょう。
・育休からの職場復帰は、焦らずスロースタートを心がけましょう。
出産後は、ホルモンバランスの急激な変化や役割負担の増加、育児による疲労や不安などが相互に作用し、心のバランスを崩すことがあります。
気分の落ち込み、憂鬱な気持ち、日々の暮らしの中で喜びの減退、楽しめない感じが継続した際には、医療への相談を視野に入れましょう。
筆者:産業カウンセラー 公認心理士