こころとからだの健康
職場のメンタルヘルス 管理監督者向けpart2 ~部下のメンタルヘルス不調に気付く~
弊社相談センターは、どのようなご相談でもお受けできる「何でも相談」として窓口を開設して参りました。会員企業様の従業員様はもとより、中間管理職、人事、総務部門、経営層の方からのご相談も多く寄せられています。
今回は数多く寄せられたご相談から一部、代表的な事例(加工済み)を皆さまと共有させていただきます。
上司Aさん:
昨年入社した部下の体調が悪そうだ。先週、今週と1回ずつ遅刻があった。朝のミーティングでも発言が少なくなり、声を掛けても今までのような覇気がない。
ランチもこれまでは同僚に進んで外食の誘いをかけていたが、今は自席でボソボソと少量のものを食べているようだ。女性社員のため体調の変化などがあるのかと思い、2週間様子を見ていたが、やはり今までと違う印象がある。このまま経過を見守る方が良いのか、声掛けをするべきか、今後について教えてほしい。
カウンセラー:
部下の様子をよく観察され、その上で見過ごすリスクについてもよくお考えの様子です。女性社員のため、体調の問いかけ方法に悩まれておられるお気持ちも伝わってきました。こうしたいつもと違う様子に気が付かれることがメンタルヘルスの予防にはとても大切です。
「何か変」に気づいた後は、「変」を言語化します。上司が気が付いた変化を書き出してみましょう。
・遅刻が散見される 週1が2週間継続
・発言が減少
・食欲の低下が見て取れる
・周囲との関わりが減少
・覇気の低下
・回復の兆しが見えない
などがありました。
遅刻があった際、理由を確認することは大切です。責める文言にならないよう留意しながら言葉を選び問いかけてみましょう。
「〇〇さんが遅刻するのは珍しい」と事実で伝えます。
次に「それなので、どうしたのかと心配した」と気持ちを伝えます。
さらに「何か事情があったのかな?」など相手の状況を確認します。
ここで本人から状況の開示があれば、その状況について一緒に考えていきます。
開示がない場合であっても、対話を打ち切るのではなく、提案をします。
「いつでも相談に乗れるしサポートはできる」ことを伝え、「もし体調に関することであれば、保健師に相談も可能」「相談ができる窓口がある」という代替案も伝えてみましょう。
メンタル不調の兆候に気づくポイントとしては、
Aさんの様に、具体的に観察を行います。
・常態からの変化を言語化すること
「いつから」「どのような」と具体的に書き出します。記録を残すことは大切です。上司は日常の業務が忙しいため、日時や状況など詳細を失念してしまう可能性もあります。また変化が、増えつつあるのか、減りつつあるのかの経過確認をするためには、正確な記録が助けになります。
・睡眠、食欲の増減(体重の増減)については、言葉で確認します。
・身だしなみ、常態からの変化などは目で観察し記録します。
・勤怠の変化については、遅刻や休業の頻度などの事実で確認を行います。
・一人で抱え込まない。先ほども触れたように、身体的な変化については産業保健スタッフへの相談を行い、声掛けのポイントなどの助言を貰いましょう。また、状況により上位上司とも共有をしておきましょう。
・温かな声掛けを心がけ、問診調や詰問にならぬよう言葉を選びましょう。EAPなどの相談窓口へ相談し、カウンセラーから助言を貰うことも方法のひとつです。
・秘密の保持は大切です。ラインを守りましょう。
筆者:産業カウンセラー 公認心理師