その他
組織に貢献し、見返りを期待しない「組織市民行動」は、組織や職場の潤滑剤に
「組織市民行動」とは、本来自分の役割ではない範囲の仕事や自分の業績には直接結びつかない業務を進んで行う行動を指します。組織市民行動を行う人が一定数いる組織は、上手く回っている場合が多いと言われています。従業員同士が助け合う働きやすい職場づくりを目指すためには、「組織市民行動」を意識することが大切です。
組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior、OCB)とは
組織市民行動はインディアナ大学のデニス・オーガン教授らが概念を提唱しました。
組織市民行動とは、従業員が本来の役割ではない範囲で、誰に強制された訳でもなく、自発的に組織の効率や利益を促進する行動を指します。
組織市民行動の定義
デニス・オーガン教授によると、組織市民行動は、「従業員の行動のうち、彼らにとって正式な職務の必要条件ではない行動で、それによって組織の効果的機能を促進する行動。しかもその行動は強制的に任されたものではなく、正式な給与体系によって保証されるものでもない」と定義しています。
つまり、
1. 任意の行動であること
2. 公式の報酬体系の対象ではないもの
3. 組織の効率を促進するもの
と言えます。
組織市民行動の5つの要素とは
提唱者であるデニス・オーガン教授は、組織市民行動を5つの要素に分けて説明しています。
1. 対人援助・利他主義
自分の利益より他者を優先し、困っている人がいれば助ける、仕事を手伝う、部下を気にかけ自発的にフォローするなど。
2. 誠実さ
不用意な欠勤や遅刻をせず、社内ルールを守り、自身の業務を誠実にこなし、仕事をサボらない。
3. マナー・礼儀正しさ
他者を尊重し他人の権利を尊重する考え方。周囲に迷惑をかけず可能な範囲で自己完結する行動。
4. スポーツマンシップ
思い通りにならないことが生じても環境の所為にしたりせず、現状を受け入れ最善を目指す行動。他者のミスを不必要に攻め立てたりしない。
5. 市民の美徳
組織内の従業員として責任感をもって行動する。参加が義務付けられていないイベントであっても参加、関与する。
組織市民行動の影響
組織市民行動は、「役割外行動」と言われ、組織市民行動が高まると従業員の生産性や離職意思が低下することも分かっています。
組織市民行動の高い従業員は仕事満足度が高く、エンゲージメントが高い従業員は組織市民行動が高いことも研究から明らかにされています。
誰にも割り当てられていない仕事ほど大切
会社の中には、誰にも割り当てられていない業務が存在します。「名もない仕事」とも言われ、いつも誰かがそれをしてくれているから、職場環境が快適になったり、事業がうまく回ったりするのです。
善意で行われ、報酬を求めず、他者をラクにするこうした行動があることで、組織の潤滑材になったり、快適な職場づくりを促進するものとして近年再注目されています。
例えば
・オフィスに落ちているごみを拾ったり、コピー機のごみを片付ける
・病気休業した他の社員の仕事を手伝う
・誰も見ていなくても、就業規則を守る
・困っている人がいれば助ける
・トイレットペーパーを補充する
・研修会などの会場設置
・紙の補充や物品の補充
組織市民行動を促進するには
組織市民行動を促進する要因の一つに、組織の公正さがあります。組織は公正な人事評価を行い、組織に対する信頼感を醸成することが大切です。
組織市民行動を行いやすい性格特性も指摘されており、誠実性、調和性、職務満足感、組織コミットメント、ポジティブ感情、公正感が挙げられています。
また、ある研究によると、地域貢献の清掃活動を全社をあげて取り組んだ結果、地域からの評価が高まると同時に、組織の中での組織市民行動が向上したという結果がありました。
実際には、先に挙げた5つの項目のうちのどれかを実行している人は多く存在しているのでは?と思います。更なる組織市民行動につなげるためには、
1. 自分にできることをまずは一つでもやってみる
2. 周囲の組織市民行動を見かけたら、声に出して相手に感謝を伝える
3. 利他の気持ちをもつ
4. 自分の行動が「働きやすい職場づくり」を支えていると内発的動機を持つ
を心がけていただければと思います。
「組織市民行動」と相反する組織をダメにする「非生産的行動」とは
組織市民行動を促進する要因の一つに、組織の公正さがあります。組織は公正な人事評価を行い、組織に対する信頼感を醸成することが大切です。
組織市民行動を行いやすい性格特性も指摘されており、誠実性、調和性、職務満足感、組織コミットメント、ポジティブ感情、公正感が挙げられています。
また、ある研究によると、地域貢献の清掃活動を全社をあげて取り組んだ結果、地域からの評価が高まると同時に、組織の中での組織市民行動が向上したという結果がありました。
実際には、先に挙げた5つの項目のうちのどれかを実行している人は多く存在しているのでは?と思います。更なる組織市民行動につなげるためには、
1. 自分にできることをまずは一つでもやってみる
2. 周囲の組織市民行動を見かけたら、声に出して相手に感謝を伝える
3. 利他の気持ちをもつ
4. 自分の行動が「働きやすい職場づくり」を支えていると内発的動機を持つ
を心がけていただければと思います。
「組織市民行動」と相反する組織をダメにする「非生産的行動」とは
組織が社員の利益に反する非協力的な行動を「非生産的行動」「非生産的職務行動」といいます。具体的には、ハラスメントやいじめ、嫌がらせ行動、遅刻やずる休み、就業規則や社内マナーに反する行動、不正の隠蔽などを言います。非生産的行動は組織や被害者だけではなく、目撃者にも悪影響を及ぼします。
5つの非生産的行動
非生産的行動は大きく5つで説明されます。
1. 組織における反社会的行動
組織や社員に害を及ぼす全ての行動を指します。
例えば、放火、恐喝、贈収賄、差別、対人暴力、虚偽、怠業、窃盗、機密性の侵害、訴訟、ピンハネ、セクシャルハラスメント等。
2. 機能不全行動
従業員あるいはその集団による動機付けられた行動で、他人や自分の権利を害する行為や組織に対する有害な行為。
例えば、パワーハラスメント、アルコール・薬物乱用、破壊、法律違反、機能不全にする印象操作等。
3. 逸脱行動
組織の規範に著しく背く行動でありそれが行われることによって組織あるいは組織のメンバーの福利を脅かすもの。
例えば、会社の備品の破損や盗み、横領、勝手な早退、余分な休憩をとる、意図的にのろのろ働く、資源の無駄遣い、言語による虐待、えこひいき、同僚の噂話の流布、無益な争い。
4. 攻撃行動
3.の逸脱行動の中でも特に誰かに危害を加えようと意図して行われる行為。
5. 職場の不作法
職場の相互関係の規範に反して、ターゲットに危害を与えようとする明確な意図がなくても、単に対人的な配慮を欠いた言動
非生産的行動は個人の問題として捉えない
組織は一定のルールの下、皆で協力し合い秩序を守って保たれています。組織市民行動を実行している従業員が存在していても、逸脱し非生産性行動をとる従業員がいると不愉快な気持ちを抱くでしょう。
非生産性行動を放置していると、組織に対する信頼感は薄れ、エンゲージメントの低下につながりかねません。
非生産的行動は、一個人の問題として捉えるのではなく、組織全体へ影響を与える悪しき行動として、毅然とした態度で対策をとることが求められます。
エンゲージメントが高く、働きがいのある職場づくりは、組織市民行動の定義である5つの要素、利他主義、誠実さ、礼儀正しさ、スポーツマンシップ、市民の美徳が大切です。お互いを思いやり、「誰かがやってくれる」ではなく、自ら行動し、より良い職場づくりを目指しましょう。
筆者:パソナセーフティネット産業カウンセラー、公認心理師