こころとからだの健康
共感疲労について
この度の令和6年能登半島地震により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
「共感疲労」について知りましょう
共感疲労とは
自分以外の人たちの苦難や困難な状態に対して、思いやりや共感をすることにより、あたかも自分が経験しているかのように心が疲れてしまったり、ストレスを引き起こされる現象を言います。
「共感疲労」は米国の心理学者チャールズ・フィグレーが1995年に著書で定義を提唱しました。
共感疲労は、英語で「compassion fatigue」と表現され、「同情疲れ」「思いやり疲労」と訳されることもあります。
共感疲労はどうして起きるのでしょう
共感疲労が起きる原因は人それぞれに違いがあります。代表的な要因をお伝えして参ります。
① 大きな災害を経験し、大切なご家族や友人を亡くされたりした場合、その事実そのものが辛く苦しい状況です。さらに生存者として感じる「罪悪感」が生じることがあり、さらに被災者の心理的疲労が増すことがあります。
② ニュースやSNSなどのデジタルデバイスに触れる機会が増加し、ショッキングな動画や写真を繰り返し目にすることでダメージが蓄積され、共感疲労を引き起こすことがあります。
③ 感受性が豊か、周囲に気を遣いすぎる傾向のある人、好奇心が旺盛で情報収集を熱心にしてしまう人、困っている人を助けたいなど社会的使命感の強い人、過去に同様の経験をしたり、自身の経験と重ね合わせたりしてしまう人などは、共感疲労を招きやすいと言われています。
「共感疲労」の症状を知りましょう
身体症状
・慢性的な疲労感
・頭痛・頭重
・消化不良や下痢、吐き気などが続く
・食欲の減退、もしくは過剰に食べてしまう
・寝つきの悪さ、寝ても途中で目が覚める、朝起きられないなど睡眠の量の減少
・寝ても疲れが取れない、寝た気がしないなどの睡眠の質の低下
精神症状
・怒りっぽくなったり、訳もなくイライラする
・ちょっとしたことで気分が落ち込んだり、悲しい気持ちになる
・集中力が続かない、忘れっぽくなる
・無気力、何ごとにもやる気がわかない
・不安な気持ちが沸き起こる
・自分は役に立てないといった自責の念や自己肯定感の低下
共感疲労にならないために
情報のコントロール
TVのニュースなど継続的に流れる情報は予期せぬ時に目に入ったり、耳にすることがあります。ながら視聴はやめにしてスイッチは切っておきましょう。
また、デジタルデバイスは簡単にアクセスすることが可能な便利なツールですが、オンにするタイミングを自身でコントロールするよう心がけます。
特に小さなお子様のいるご家庭では、注意しましょう。
自分の気持ちを話す
一人で辛い気持ちを抱えずに、今感じている感情を口から出して信頼できる人に話すことは、「手放す」「身を離す」ことにつながることがあります。
しっかり眠る
睡眠時間が減少すると、イライラしたりネガティブな心持ちになったりすることは脳科学の研究から分かっています。
また睡眠不足が続くと体力も減少してしまいます。睡眠を促進するリラクセーションを取り入れても完全に至らない場合、まずはかかりつけ医や専門医に相談しましょう。
オンオフを心がけ、気分を切り替える
ネガティブなことに囚われてしまうとそこから抜け出せなくなることがあります。
マインドフルネス、呼吸法を取り入れる、その日あった「良いこと」「感謝」を思い浮かべるなど、ポジティブなイメージを持つ時間を作りましょう。
令和6年能登半島地震で被害に遭われた方、その情報に触れた方、ご支援をされている方、共感疲労は誰しもに起こりうる現象です。
周囲の人々も、ご本人も中々気付かず進行することがあります。上記に挙げた症状や状況に思いあたることがご自身、身近な方々に起きていたら、できるだけ早く専門機関や相談窓口を利用しましょう。
当相談センターでは、カウンセラーが直接ご相談にあたっております。
「少し変」「何か変わった」といった些細な変化に気が付いたときには、いつでもご相談ください。
筆者:セーフティネット産業カウンセラー、公認心理師