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職場のメンタルヘルス ~若手社員の意識の変化について考える~

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皆さまご所属の組織において、新卒就業者、若手社員の離職状況はいかがでしょう。

学卒新入社員の3年以内の離職率は3割です。少子高齢化が進む中で、労働力確保は多くの企業にとって経営課題とされ、国は若者の職場への定着促進を重要な政策課題として位置付けています。

とは言え、学卒新入社員の離職率3割台は近年の特徴ではなく実は25年以上続いており、1995年から2021年(31.2%)まで多少の増減はあるものの、およそ30%前後から36%の間で推移しています。

過剰労働を強いる「ブラック企業」などの言葉がニュースに取り上げられ、社会問題になった2016年頃でも、離職率が増加するなどの大きな変化はありませんでした。
1年以内の離職率については、むしろ2000年(15.7%)から減少しており、2020年は10.6%となりました。
つまり、入社直後の短期間で辞める人は減少しており、一定期間就業した人が離職する傾向が2000年以降の特徴になります。

(参照:厚労省 新規学卒就職者の離職率状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11652000/000845829.pdf

厚労省は、離職率を減らすべく、定着支援策を提案、労働環境改善にも取り組んできましたが、30%を大きく減らすことは叶いませんでした。
このように大きく変わらない離職率ですが、実際に相談センターでご相談をお受けしていると、「辞める」理由には違いが出てきているようです。

内閣府が行った「就労に関する若者の意識」調査で見てみましょう。
離職理由の上位です。

1.仕事が自分に合わなかったため 43.4%
2.人間関係がよくなかったため 23.7%
3.労働条件、休日、休暇の条件が良くなかったため 23.4%
4.賃金がよくなかったため 20.7%
5.ノルマや責任が重すぎたため 19.1%

が上位の5つになります。
(参照:内閣府 就労に関する若者の意識
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf/b1_00toku_01.pdf

デジタルネイティブ世代の「働く意識」の変化は、価値観の変化です。望む仕事に就けないのなら働く場所を変えてみる。つまり、「就社」ではなく仕事に就く「就職」の意識が高まったと言えるかもしれません。
また、プライベートも大切にし、労働条件、休日、休暇、福利厚生などの条件は、会社選びにおいて賃金条件を上回る結果となっています。

日本生産性本部が実施した平成31年「新入社員『働くことの意識』調査」によると、働く目的は『楽しい生活をしたい』が39.6%で1位でした。

この傾向は、2000年から急増しており、2017年をピークに2年連続でやや減少傾向が見られます。一方で「自分の能力を試す」は減少が続いており、2018年に0.5%増加しています。
さらにQ8の図にあるように、働き方についての回答では、「働き方は人並みで十分」(63.5%)と考える若者が2014年を境に増え、人並み以上に働きたい人との差が34.5ポイントも開く結果となっています。

別途質問項目である「若いうちは進んで苦労すべきか?」について、「好んで苦労することなない」(37.3%)と考える若者は過去最高のポイントとなり、人並みに働いて、好んで苦労を買ってでることはしない、という考えの若者が増えつつあるようです。

下記のQ6.では、「仕事中心か、私生活中心か」について考えを訊いたものです。「どちらでもない派」が全体の77%を占めているものの、
「私生活中心」と考える人が2019年には17%となり、仕事中心を大きく上回りました。

この5年間では、仕事や職場へのコミットメントの低下傾向が見られ、
―仕事をしていくうえで人間関係に不安を感じる 65.8%
-職場の上司、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る 49.4%
-職場の同僚、上司、部下などとは勤務時間以外はつきあいたくない 30.1%
-あまり収入がよくなくても、やり甲斐のある仕事がしたい 48.0%
-面白い仕事であれば、収入が少なくても構わない 42.0%
―周囲の人と違うことはあまりしたくない 44.9%
などの結果でした

参照:日本生産性本部が実施した平成31年「新入社員『働くことの意識』調査」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/R12attached.pdf


組織はこのように変化した若者の価値観を理解し、受け入れ、尊重していくことが大切です。個々の多様性を認め、その世代の価値観に添った対応が求められます。
「上司より先に帰るものではない」
「飲み会や食事の誘いには進んで乗るべき」
「苦労は買ってでもするものだ」
「仕事は楽しいことばかりではない」
など、過去の「べき」に拘り、価値観の修整ができずにいると、信頼関係の構築は難しいものとなるでしょう。

1人ひとりの社員の働く価値、意味を理解しサポートする体制を構築するには、コミュニケーションが基本です。
自分を理解し相談に乗ってくれる人の存在があれば、組織での孤立は防げるでしょう。
周囲が残業しているとき、コミットしていれば「おつかれさま」「お先に失礼します」と言った声掛けも可能になります。
職場での喜びは、承認欲求が満たされることでも得られるものです。

「ここに居たい」「この仲間と働きたい」「ワクワクして働く」と感じる職場つくりを目指すことは、定着を促進することにつながるのではないでしょうか。

 

筆者:産業カウンセラー、公認心理師

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