9月10日は世界自殺予防デー(World Suicide Prevention Day)です。
2003年に世界保健機関 (WHO)と国際自殺予防学会(IASP)が共同で開催した世界自殺防止会議(スウェーデン・ストックホルム)の初日を最初の世界自殺予防デーとして、世界的に自殺対策に取り組む責任があると決意表明(宣言)された日です。
日本でも10日から16日までの1週間を「自殺予防週間」と設定し、啓発運動を推進しています。
自殺はかつて「個人の問題」と認識されがちでしたが、2006年10月に「自殺対策基本法」が施行されて以降、「社会の問題」として認識されるようになりました。
「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」を目指すため、「生きるための包括的な支援」として自殺対策が推進されています。
令和3年度における自殺者数集計データで推移を見ていきます。
令和3年の自殺者数は、21,007人となり、対前年比74人(約0.4%)減少しましたが、女性の自殺者数は2年連続で増加しています。
男性は12年連続の減少とはいえ、女性自殺者の約2.0倍となっています。
出典:令和3年中における自殺の状況 令和4年3月15日
https://www.mhlw.go.jp/content/R3kakutei01.pdf
年齢階級別の年次推移
年齢階級別自殺者数の年次推移では、50歳代が最も大きく増加し、193人の増加となりました。
また、小中高生の自殺者数は過去最多だった令和2年度に次ぐ多さになっています。
自殺の背景にある原因・動機
自殺の原因・動機は複合的であり、様々な背景を有していると言われていますが、
令和3年は令和2年と比較し、健康問題が最も大きく減少した一方で、経済・生活問題が最も大きく増加し、160人の増加となりました。
「自殺に関する迷信(myth)と事実(fact)」
皆さまの中に自殺に対する誤解やアンコンシャス・バイアスはありませんか?
世界保健機関 (WHO)が各国の様々な研究を基にまとめ2017年に発表した「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識」より一部抜粋しましたので、お読みいただければと思います。
迷信:自殺について語る人は自殺するつもりはない。
事実:自殺について語る人は、外側に向けて助けや支援を求めているのかもしれない。自殺を考えているきわめて多くの人が、不安、うつ、絶望を感じており、自殺の他に選択肢がないと考えている可能性がある。
迷信:精神疾患のある人だけが自殺を考える。
事実:自殺関連行動は深い悲しみや不幸を示すものであるが、必ずしも精神疾患があることを示すものではない。精神疾患がある人の多くは自殺関連行動を示すことはなく、自ら命を絶った人すべてに精神疾患があった訳ではない。
迷信:自殺について語ることは良くない考えであり、自殺を助長するものと捉えられてしまう可能性がある。
事実:世間に広く存在する自殺への偏見を考慮すると、自殺を考えている人の多くは誰にそのことを話せばいいのかわからない。隠し立てせずに自殺について語り合うことは、自殺関連行動の助長ではなく、その人に自殺以外の選択肢や決心を考え直す時間を与えることができる。結果として、自殺を防ぐことにつながる。
迷信:自殺を考えている人は死ぬ決心をしている。
事実:反対に、自殺を考えている人は「生きたい」気持ちと「死にたい」気持ちの間で揺れ動いていることが多い。例えば、農薬を衝動的に飲んでしまい、生きたいと思っても数日後に亡くなることがある。正しいタイミングで情緒的支援にアクセスすることができれば、自殺を防ぐことができる。
引用文献:自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識2017年 最新版 付録4
厚労省の取り組み
厚生労働省は、関係府省庁等と連携をした取り組みを実施しています。
今年は自殺予防週間に先立ち、子ども・若者の自殺予防に向けた取り組みを強化するため、文部科科学省、内閣官房孤独・孤立対策担当室と連携し、集中的な啓発活動もしています。
「まもろうよこころ」https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
自殺予防は、支援が必要な人の周囲にいる人々の気づき、声掛け、傾聴、見守りが大切です。
厚生労働省では、心理、社会的問題や生活上の問題、健康上の問題を抱えている人など、自殺の危険を抱えた人々に気づき、適切にかかわるゲートキーパーの養成研修も行っています。
特別な資格は必要なく、家族や同僚、友人でもゲートキーパーの役割を学ぶことができます。ご興味のある方は、
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/gatekeeper/
をご覧ください。
筆者:公認心理師 産業カウンセラー