こころとからだの健康
喫煙とストレス~喫煙はストレス発散になるの?~
今回のコラムでは、喫煙について考えてみました。
喫煙にリラックス効果はあるのか?
厚労省「e-ヘルスネット」によると、喫煙とストレス発散について、このような解説があります。
「喫煙者の1日の気分の変化を調べた研究によると、喫煙している人のストレス感は喫煙する前に高く、喫煙した直後に低下し、次の喫煙までの間に増加することがわかっています。この結果を喫煙のストレス軽減効果が一時的であると解釈することもできますが、むしろニコチン切れによる離脱症状(イライラ・易攻撃性など)を喫煙によって緩和しているにすぎないと解釈するほうが適切です。」
「ニコチンの血中濃度の半減期は約30分と短く、喫煙して一時的に離脱症状が改善されても、1日の中で何度もたばこを吸いたくなったりイライラなどの症状がみられることになります。つまり喫煙はストレス解消法というのは思い込みで、実はストレスを作り出す原因(ストレッサー)なのです。」
喫煙がストレスの発散になると信じて喫煙を続けている方にとっては、驚きの事実、耳に痛い真実かもしれません。
日本は、世界保健機関が発行した「WHOたばこ規制枠組条約」に加盟しており、国内の事業者に対する規制では、健康増進法、職業安定法施行規制を改正し、職場の喫煙問題に取り組むことが求められています。
喫煙と呼吸法
深い呼吸はリラクセーション効果があることは多くの人に知られています。けれども、喫煙の場合は、深く息を吸い込むことはリスクがあるようです。
愛知県がんセンター研究所の福本紘一氏らの研究報告によると、「煙を深く吸い込む」タイプの喫煙者の発がん発生リスクは非喫煙者と比べ、3.28倍であり、「ふかす」群に比べ発症リスクが1.52倍という結果になりました。
リラクセーションに呼吸法を取り入れるのであれば、喫煙中ではなく、ぜひ別のタイミングでなさることをお勧めします。
喫煙以外のリラクセーション法をみつけ、その方法を増やすことで、禁煙行動にもつながるでしょう。
ご参考に簡単にできる呼吸法をご紹介
「ハーバード式 4-7-8呼吸法」(米国 医学博士のアンドリュー・ワイズ氏が唱えた呼吸法)
<1>口から完全に息を吐き出す
<2>4秒間、鼻から息を吸い込む
<3>7秒間、息を止める
<4>8秒間かけて、ゆっくり口から息を吐き出す
呼吸法の名称にあるように4秒、7秒、8秒が大切なポイントです。
最大4セットを目安に行いましょう。
自律神経を調節することができますので、仕事中にストレスを感じたり、緊張があるとき、自宅で就寝が上手くいかないときなど実践してみましょう。
「離脱症状」とストレス
一度、喫煙を始めてしまうと禁煙することにより「離脱症状」が起きるため、止めることは中々困難と言われています。
「たばこが身体に悪いことは分かっているけれど、今は止められない」と考えている方もおられるでしょう。
けれども喫煙に成功した人は、タバコを吸える場所を探すストレス、周囲から嫌な顔をされるストレス、離脱症状による「吸いたい欲求」と闘うストレスから解放されることによって精神的健康度も改善したと感じる人が多いようです。
ニコチン中毒度をチェックしてみましょう
日本禁煙学会の調査によると「たばこは薬物」であり、依存性はアルコール・覚せい剤を上回ると言います。
自分はいつでもたばこをやめられると思っている方、ぜひ「ニコチン中毒」のチェックリストでチェックをしてみましょう。
「ニコチン依存症」のチェックリスト
o 1.自分が吸うつもりよりも、ずっと多くたばこを吸ってしまうことがありましたか
o 2.禁煙や本数を減らそうと試みてできなかったことがありましたか
o 3.禁煙したり本数を減らそうとした時に、たばこがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか
o 4.禁煙したり本数を減らそうとした時に、次のどれかがありましたか(イライラ、神経質、落ち着かない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
o 5.上の症状を消すために、またたばこを吸い始めることがありましたか
o 6.重い病気にかかって、たばこはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか
o 7.たばこのために健康問題が起きているとわかっていても吸うことがありましたか
o 8.たばこのために精神的問題が起きているとわかっていても吸うことがありましたか
o 9.自分はたばこに依存していると感じることがありましたか
o 10.たばこが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか
(5つ以上当てはまる場合は、依存症の可能性が高いと言われています)
禁煙について
禁煙のポイントとして、厚労省「e-ヘルスネット」ではこのような助言をしています。
「禁煙の準備 禁煙7日前から行う禁煙のコツ」
1.禁煙開始日を設定しよう
2.吸いたい気持ちの対処法を練習しよう
3.いつもと違う「ん?」という感覚を身につけよう
4.お薬を選ぼう(禁煙補助薬、ニコチンパッチなど)
5.治療用アプリについて知ろう!
「禁煙開始からまだ間もない方へ」《実行期編》
1.喫煙を開始できた自分を褒めてあげましょう!
2.よかったことを捜しましょう!
3.たばこのイメージを塗り替えましょう
4.1本の誘惑に負けないようにしましょう。
とにかく、禁煙を始めてみる
「禁煙がうまくいかないんじゃあないか」「失敗するかも」「一時期止めたけれどまた吸い出してしまった」
など、不安や自分自身に対する不信感を持たれることもあるかもしれません。
けれども、禁煙に失敗したとしても、損はありません。何度でも挑戦すればよいのです。
周囲も「止められなかったの?」と責めたりするのではなく、「またチャレンジすればいい」という温かい目で見守り、応援することが大切です。
筆者:産業カウンセラー、公認心理士
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-001.html
日本禁煙学会
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/information/2018625t.pdf