セルフケア ～ストレスについて考える～

ストレスとは
「ストレス」の語源は、オックスフォード英語辞典によると苦痛や苦悩を意味するdistressが短くなった言葉と説明されています。
生理学者であるハンス・セリエは、ストレスを引き起こしているものを、ストレッサーと造語して区別しました。
セリエは、「ストレスには生体的に有益である「快ストレス」と不利益である「不快ストレス」の2種類があり、これらのストレスが適度な量だけ存在しなければ本来的に有する適応性が失われてしまうために適切なストレスが必要である。」としました。

ストレスの測定方法
現在では、ストレスを測定する様々な方法が存在します。

・「ストレスチェック」
皆さまがよくご存じの「セルフチェック」です。厚生労働省は、従業員が50人以上の事業所で毎年実施することを義務付けています。
受検したときの瞬間値でストレスをはかります。57問、80問、120問が作成されており、企業により設問数は自由選択になっています。
ストレスチェックの目的は「セルフケア」です。高ストレス判定になった者は、産業医面接を希望することができますし、判定結果を自身のセルフケアに活かすことができます。

・「心拍測定」
アプリなどを利用し、脈拍計測を行い心拍解析、心拍変動解析などから自律神経のバランスを測定する方法

・「コルチゾール測定法」
「唾液」「尿」「毛髪」などからストレスホルモンであるコルチゾール動態をはかる方法

・「バイオピリン検査」
過度な心理的ストレスを受けた時や、精神疾患にかかると顕著に増加することが報告されているバイオピリン値を尿中から検出し、精神疾患につながる心理的ストレスを数値化できる検査方法

ストレス反応に自身で気づく
上記のような測定方法を取らずとも、ストレスにより生じたストレス反応として現れる症状や常態からの変化として自分自身で気づくことがあります。
例えば、
心理反応として、不安、イライラ、怒り、罪悪感、孤独感、気分の落ち込み、無気力、自己肯定感の低下 等々。
身体反応として、動悸、頭重・頭痛、食欲低下・増加、下痢・便秘、不眠、腰痛、肩こりなど節々の痛み 等々。
行動面の反応として、飲酒・喫煙量の増加、怒りの爆発、引き籠り、回避行動 等々。

こうしたストレス反応は個人によって異なり、また状況、状態によっても異なります。
さらに、ストレス反応は、イライラ⇒過食行動⇒吐き気⇒気分の落ち込み⇒不安⇒不眠⇒昼夜逆転⇒引きこもり など相互に反応していくこともあります。

ストレス対処
ストレスコーピング
「ストレスが溜まった」「ストレス過多だ」といったとき、みなさまは、何らかの対処方法をお持ちでしょうか？
一般的なストレス対処の方法として研修でもお伝えしているものに、
3つのR(英語のRest、Relaxation、Recreationの頭文字を取ったもの)があります。

Rest（休養、休憩）：代表的なものは睡眠です
Relaxation（リラクセーション）：ヨガ、ストレッチ、入浴、マインドフルネスなどの呼吸法
Recreation（リクリエーション）：気晴らし、気分転換といわれるもので、趣味、娯楽、運動、音楽、旅行、散歩など
があります。

ストレスマネジメント
ストレスマネジメントは、ストレスへの備えとストレスを受けたときの対処です。
ストレスへの備えは、普段から規則正しい生活リズムを習慣化するなどの健康行動をとっておくこと、また、レジリエンス（復元力、回復力）を高めておくことや、ソーシャルサポートを普段から構築しておくことなどが挙げられます。

対処法としては、先に挙げた情動焦点型コーピングの方法（3つのR）をいくつも持っておくこと。
また、問題焦点型コーピングとしてストレス要因となった問題そのものに直接働きかけ、対処する方法などが挙げられます。問題そのものを軽減したり、ゼロにするのは難しいですが、ソーシャルサポートを活用して相談する、助けを求める、調整役をしてもらうなどが挙げられます。

新型コロナ感染症も徐々に終息に近づいてきたとはいえ、まだまだ私たちは制限のある毎日を送っています。また、日々の生活を送る中で、仕事のプレッシャー、社内外の人間関係によるストレスを感じることが多いと思います。

今回のコラムが、ストレスを理解し、対処法の情報を得ること、ストレスについて考えることの一助になれば幸いです。

参考：
Selye H. A syndrome produced by diverse nocuous agents. Nature 1936;138(3479):32.
リチャード・S・ラザルス著, スーザン・フォルクマン著, 本明寛ら訳（1991）,『ストレスの心理学 認知的評価と対処の研究』, 実務教育出版

筆者：産業カウンセラー　公認心理士